上田ハーロー特別企画

2020年 米国大統領選挙

~大統領選挙の勘所、ドルはどうなる~

 

執筆日:2020年10月16日

 

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの中、感染者や死者数が最も多い米国では4年に一度の大統領選挙が実施される。再選を目論む現職のトランプ米大統領/ペンス副大統領と政権奪還を目論む民主党のバイデン元副大統領/ハリス上院議員が11月3日(火)の投票日に向けて、選挙戦を実施している。

 

 

■今年の大統領選で注目すべき点(勘所)■
1.勝敗のカギを握るトスアップ州
2.支持率よりもオッズが世論を反映
3.大統領、上院、下院はどちらの党が制するか
4.郵便投票の問題点
5.オクトーバーサプライズとは
6.大統領選後のドルはどうなる

 

■過去の大統領選とその後のドル円の動き■

 

 

 

 

■今年の大統領選で注目すべき点(勘所)■

 

 

1.勝敗のカギを握るトスアップ州

 

トスアップ(toss-up)とは?

硬貨など投げて、勝敗や順番を決めることで、表が出るか、裏が出るかは五分五分な状態のこと。米国大統領選では共和党が勝つか、民主党が勝つかその時にならないとわからない州をトスアップ州と呼んでいる。

 

米国では大統領は直接投票で選ぶのではなく、各州で投開票をして、勝者が州ごとに割り振られた選挙人を獲得(総取りするケースが多い)、獲得した選挙人が多い方が大統領に選出される。

 

選挙人の数は538人、過半数が270人だが、トスアップ州の選挙人は200人弱と全体の35%近くあり、このトスアップ州の勝敗が大統領選挙の結果に大きく影響するといわれている。

 

 

トスアップ州(激戦州)

出典:メディアのデータから作成

 

 

 

 

2.支持率よりもオッズが世論を反映

 

大統領選挙の予測は世論調査で語られることが多く、政治ニュース及び世論調査のデータをまとめたサイトが参照されている。このサイトには、大統領選挙の他にも、上院、下院の議会選挙の世論調査、大統領選挙のオッズまでもが公表されている。オッズはどちらが勝つかの賭けのため、世論調査よりも世論を反映している可能性が高く、新型コロナウイルスの感染拡大以降ではバイデン候補の勝利予想が多くなり、9月29日の第1回討論会、トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染を受け差が拡大したが、同大統領の早期の退院、トスアップ州での支持拡大への積極的な選挙活動で、最大34.7ポイント(10月11日時点)の差が、21.2ポイント(10月19日時点)まで縮まってきている。

 

 

出典:RealClearPolitics

 

 

 

 

3.大統領、上院、下院はどちらの党が制するか

 

4年に一度の大統領選挙と同時に議会下院の435議席(全議席)と上院の100議席のうち、33議席と死亡や辞職に伴う空席2議席を加えた35議席が争われる。そのため、大統領、議会をどちらの政党が制するかで、政権の運営に大きな違いが出る。現在は、トランプ大統領(共和党)、議会上院(共和党が過半数)、議会下院(民主党が過半数)となっており、いわば「ねじれ」の状態だ。2018年の中間選挙では、民主党が議会下院で過半数を奪還したものの、議会上院では改選数が限られたことで奪還には至らなかった。

 

今回の選挙では、大統領、上院、下院のすべてを民主党が獲得する可能性がある(逆の場合もあるが、可能性は低い)。民主党のカラーはブルー、そのため、ブルーウェーブが起こるのではと、注目されている。

 

ブルーウェーブとなった場合には、大統領の政策が議会で可決されることが多くなり、政策実効性が高まることが予想される。

 

 

 

 

4.郵便投票の問題点

 

2020年の選挙は新型コロナ感染拡大予防のため、郵便での投票の申請が大幅に増えた。コロラド州やハワイ州のように毎選挙が郵便投票の州がある一方で、カリフォルニア州、ネバダ州、ニュージャージー州のように2020年の選挙に限って、郵便投票を行う州もある。

 

郵便投票の問題を記すと下記となる。

・本人の特定が人的裁量となる(封筒と登録名簿のサインが同一かを選挙管理人が判断)。

・投票日までに到着の州が27、消印が有効は州が23、消印は最大で7日後まで有効な州もある(遅配による無効票がでる可能性がある)。

・開票も州により異なり、22日前からや受け取り次第の州がある一方で、投票日まで開票できない州も多い。

 

そのため、どちらの候補が勝利したかが判明するのに時間を要することになる。ちなみに民主党が党大会でバイデン候補を決めた郵便投票では、結果判明まで6週間を要した。また、郵便投票は民主党支持者に多いといわれ、遅配による大量の無効票が出た場合にはバイデン候補が、得票(選挙人獲得)で不利な場合にはトランプ米大統領が訴訟を起こし、司法の判断に委ねられる可能性がある。

その他にも、両候補とも、早々と勝利宣言を行うことも考えられ、ことにトランプ米大統領が敗れた場合には政権の移行がスムーズにいくか疑わしい。

 

 

 

 

5.オクトーバーサプライズとは

 

本記事執筆は10月16日(金)である。選挙まで3週間を切った段階だが、現時点で両候補に大きな差は開いていない。2016年、2012年は11月の選挙直前に、選挙戦に大きな影響を与える出来事があり、2016年はトランプ候補がクリントン候補を破り勝利、2012年はオバマ大統領(当時)がロムニー候補を破り再選を果たした。

 

オクトーバーサプライズについては、当社用語辞典(https://www.uedaharlowfx.jp/dictionary/octobersurprise.html)に詳細を記載してある。

 

今年(2020年)のオクトーバーサプライズは、発端が9月だがすでに起こったとみるか、これから起こるとみるか、それとも起こらないかのどれかだろう。

 

すでに起こったと仮定した場合のサプライズは、

・リベラル派のギンズバーグ最高裁判事が死去(9月18日)

・トランプ米大統領がエイミー・バレット氏の指名を発表(9月26日)

・ホワイトハウスのローズガーデンで式典開催(同日)

・トランプ米大統領が新型コロナウイルス感染を発表(10月2日)

・トランプ米大統領が公務復帰(10月9日)

・トランプ米大統領、TV討論会のリモート参加を却下、討論会自体が中止に(同日)

 

と考えている。仮にこのあと、サプライズがなく、トランプ米大統領が敗北すると、新型コロナウイルス感染が大きな原因となるだろう。

 

他方で、10月下旬にサプライズが起きるとすれば、

・新型コロナウイルスのワクチン承認(臨床試験一時中止で難しいか)

・バイデン候補の新型コロナウイルス感染

・米中や米朝の電撃首脳会談

・米でのテロ発生

 

などが考えられそうだ。

 

 

 

 

6.大統領選後のドルはどうなる

 

まず、両候補の経済政策に限って公約を確認してみたい。

 

 

項目 トランプ大統領 バイデン候補
新型

コロナ

経済の回復に注力 再開に向けた8段階の計画

(再開慎重)

雇用対策

52.5万人の雇用確保

(専門職のビザ発給停止)

最低賃金引き上げは各州判断

緊急経済対策

500万人の雇用創出

バイ・アメリカン政策

最先端技術の開発投資他

連邦最低賃金の引上げ2倍の15ドルへ

所得税 中間所得層の10%減税

法人税率を28%へ引き上げ

富裕層への最高税率引き上げ

対中政策 高い関税をかけ貿易交渉では優位に

物品の生産を米に戻す

ダンピングや為替操作に断固たる措置

人工知能、再生可能エネに研究開発費

物品の生産を米に戻す

 

両候補の内容を見ると、大きく分けると、トランプ米大統領が1期目の法人や富裕層への減税の範囲を中間層に広げ、対外的に関税等の圧力をかけることでの雇用の創出や貿易赤字削減の継続を目指しているのに対し、バイデン候補は研究開発投資を軸とした経済の活性化と、低所得層に対する賃金引上げなど社会保障を重視した政策となっており、双方の支持基盤の違いが明確となっている。どちらが良いとは一概に言えないが、ミシガン大が実施したアンケート調査ではトランプ米大統領の政策への期待がわずかだが上回っていた。

 

1期目のトランプ米大統領の公約実行率は高く、パリ協定(地球温暖化防止)からの離脱、TPP(環太平洋パートナシップ)からの離脱、NAFTA(北米自由貿易協定)を見直し、USMCAの締結、10年で1.5兆ドルの大型減税、エネルギー開発への規制緩和、ドットフランク法(金融規制)の緩和、輸入関税の引き上げなど多数で、できなかった公約は財政再建、10年で1兆ドルのインフラ投資、医療保険制度改改革法(オバマケア)の撤廃、メキシコとの国境の壁建設など限られたものとなっている。

 

経済だけを見れば、トランプ米大統領が再選されたほうがドル高への期待感は出てきそうだ。

 

ところが、過去の米大統領選の投開票後を見てみると、選挙前後の年の経済状況にもよるが、大統領が決まり、政策に期待が出てドル高になる傾向がある。

 

 

 

 

■過去の大統領選とその後のドル円の動き■

 

■2016年(トランプ氏51.8% / クリントン氏 48.2%)

 

2016年はオクトーバーサプライズ(クリントン氏のメール私的利用問題)でトランプ氏優勢、そのまま大統領選を制した。減税や景気刺激に期待が強まり、株価の上昇、ドル高になったが、ドル高は続かなかった。

 

 

 

■2012年(オバマ氏 61.7% / ロムニー氏 38.3%)

 

2012年は劣勢だったオバマ大統領(当時)はハリケーン「サンディ」の米東部上陸に対し、対応が素晴らしいと共和党州知事から絶賛されたことで、大差での再選を果たした。日本のアベノミクスもあり、2013年はドル高に。

 

 

 

■2008年(オバマ氏 67.8% / マケイン氏 31.2%)

 

サブプライムショックから、リーマンショックに続く時期であり、金融機関などへの規制強化を唱えたオバマ氏が大差で勝利、就任まではドル安、就任後は期待感でのドル高となるが、戻りは限られた。

 

 

 

■2004年(ブッシュ氏 53.1% / マケイン氏 46.9%)

 

2001年の米国同時多発テロの首謀者がオサマ・ビン・ラディンとの報道でブッシュ大統領が再選されたことで、期待が高まりドル高が継続した。

 

 

 

■2000年(ブッシュ氏 50.3% / ゴア氏 49.7%)

 

史上、類を見ない大接戦となり、トスアップ州のフロリダ州では、票の再集計(機械と手作業)が行われたが、決着がつかず、手作業での再集計を求め、ゴア陣営が州地裁へ提訴(敗訴)、州最高裁へ上告(勝訴)した。ブッシュ陣営は連邦最高裁に再集計の疑義を提訴、連邦最高裁は州最高裁へ差し戻しの決定(事実上の違憲判決)で勝敗が決した。再集計や訴訟問題に発展したが、ブッシュが優勢な状況は変わらず、ドル高となった。ただ、判決が出るまでは方向感は出なかった。決着後はITバブルもあり、ドル高になった。

 

 

 

■2020年の状況

 

2020年の経済状況は、年初には中国の武漢で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が確認されて、パンデミックとなった。その後、感染拡大防止でロックダウン(都市封鎖)や国をまたぐ移動制限が実施されて、リーマン・ショックを上回る景気悪化が観測された。米では感染者数累計が800万人を超え、死者数も20万人を上回っている(10月17日現在)。公衆衛生上の非常事態宣言といっても過言でない中での大統領選挙となっており、ワクチンの完成目処が立っていない中で、金融政策、財政政策による景気の下支えは行っているが、長期にわたる低金利政策をFRBが示しているため、ドルの下落となっている。

 

 

どちらが大統領になっても、現在停滞している追加経済対策を実施することはほぼ確実であり、米景気回復期待がドルを押し上げることが予想されるが、トランプ大統領再選となれば、政策実行力、カリスマ性(他国の通貨安政策を許さない)などから、積極的なドル買いへ、バイデン新大統領ならば、政策実行力には疑問、他国の通貨安政策を放置の可能性が高く、消極的なドル高を予想するが、米金利が上昇しにくいため、ドル高も限られるだろう。

 

 

【執筆者紹介】

 

 山内 俊哉(執行役員)

 

1987年 商品先物会社入社。コンプライアンス、企画・調査などを経て、1998年4月の「外為法」改正をうけ外国為替証拠金取引の立ち上げを行う。バックオフィス業務およびカバー取引に従事しながら、週刊レポートの執筆やセミナーの講師なども手がける。
2005年7月 上田ハーロー入社。 前職の経験を生かし、個人投資家の視点でブログなど各種情報の発信やセミナー講師に従事。TV東京オープニングベル、ブルームバーグTVなどへ出演。現在は、日経CNBC「朝エクスプレス」為替電話レポートに出演のほか、金融情報サイトなどへの情報提供などでも活躍している。

 

※2級ファイナンシャル・プランニング技能士 日本FP協会会員(AFP)

 

 

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上田ハーロー株式会社
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