執筆日時:2021年9月1日05時00分
更新日時:2021年9月6日10時12分
執筆者:上田ハーロー株式会社 小野 直人

 

 

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今回の米国雇用統計(2021年9月3日発表)の振り返り

出所:上田ハーローFX「UHチャート」

 

3日、米労働省が発表した8月の非農業部門雇用者数(NFP)は23.5万人増と、市場予想75.0万人の凡そ3分の1に留まり、今年1月以来の低い数字になりました。どの分野もきつかったようですが、特に小売業・外食など対面でのサービス提供が求められる職種の苦戦が目立ちました。バカンスシーズンなど特殊要因はあるのですが、新型コロナ変異種の感染拡大が企業の採用意欲を後退させたことが主因のようです。

 

他方、時間給は増加。前月比0.6%と4月以来の強い伸びでした。製造業の人手不足や低賃金層の給与引き上げが続いています。雇用低迷、インフレ加速と好感しづらい内容に、ここ数カ月続いていた労働市場のミスマッチ解消が後退したイメージで、米金融当局がテーパリング開始の条件としている「一段と顕著な進展」には及ばない可能性を示唆しました。

 

結果を受け、金融市場は混乱気味でした。為替市場はドル安となり、109.90円付近で推移していたドル円は109円半ばへ低下し、ユーロドルは1.1907ドル付近までレンジ上限を広げ7月30日以来の高水準をつけました。他方、株式市場は売りが先行しましたが、米当局が現行の政策を直ちに変更しないのではとの思いから後半下げ幅を縮小し、ダウ平均は前日比74.73p安の35,369.09ドルで取引を終えました。また、金利はインフレ加速から10年債利回りは1.32%台へ小幅に上昇しました。

 

 

1.はじめに

2021年9月3日(金)、日本時間21時30分にアメリカで8月雇用統計が発表されます。予見できる近い将来(年内)にテーパリング(購入資産の段階的縮小)開始との見方が主流ですが、ペース・時期については未だ明確になっていません。8月分の雇用統計が、それらの指針になるのか投資家は注目しています。もっとも、パウエルFRB議長が「資産購入の段階的縮小が利上げのシグナルにはならない」と釘を刺していることもあって、どこまで反応するかは未知数。加えて、コロナ感染再拡大を危ぶむ声も聞かれるなか、非農業部門雇用者数(NFP)の市場予想は40万人程度から100万人超えと幅が広がっています。焦らず内容を吟味してから取引を手掛けても遅くはなさそうです。

 

 

2.前回のおさらい

米労働省が発表した7月のNFPは94.3万人増と、直前の市場予想87.0万人増を上回りました。また、失業率も5.4%と昨年3月(4.4%)以来の水準へ改善し、年後半に向け力強いスタートを切ったとの心象です。

 

ただ、今回も6月と同様に教師や学校関連の就業者増がヘッドラインを押し上げた点は注意が必要です。政府部門は6月の16.9万人増から24.0万人増へ拡大しましたが、民間部門の雇用者数増加は70.3万人と6月(76.9万人)から減少しています(図表1.)。民間の伸びがこのまま落ち着くようなら、新学期が近づき学校関連の雇用ボーナスを失ったときに市場全体を圧迫する危険はあるでしょう。また、平均時給は前月比0.4%増と4カ月連続で増加。賃金を引き上げなければ労働力が確保できない状態が続いており、物価へのプレッシャーは上向きのままのようです。

 

結果を受けた為替市場はドル高に。米長期金利が1.25%付近から1.303%付近まで上昇したことに支えられて、ドル円は110.34円付近までの戻りを試しました。かたや株式市場はまちまち。ダウ平均株価は144.26ドル高の35,208.51ドルで終えましたが、IT関連株には利食い売りが目立ちナスダック総合は59.36p安い14,835.76pで週の取引を終えました。

 

 

図表1.分野別新規雇用者数(千人)

 

出所:米国労働省

 

 
 

 

図表2.前回発表前後のドル円の動き

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート」

 

 

 

 

3.今回の見どころ

7月FOMC議事要旨などの当局からのメッセージ、雇用統計、消費者物価指数など複数材料から判断すれば、年内のテーパリング開始観測は妥当な線と市場では捉えています。ただ、開始の時期・規模を巡ってはまだ会合参加者の間で十分に意思統一がなされているとは言えず、この部分は9月会合へ持ち越しのようです。そのため、今回の雇用統計がFOMC内での意見集約の材料となるかどうかがポイントと考えます。特に、パウエル米FRB議長が「サービス分野の雇用回復には支援が必要」と語っている点を踏まえると、同分野がどこまで持ち直しているかが開始時期を巡る判断に大きく影響するのではないでしょうか。

 

 

図表3.非農業部門の就業者数推移

 

米労働省のデータをもとに上田ハーローが作成

 

こうした点は図表3.からも読み取れます。直近2カ月のNFPは市場予想を上回る着地と雇用市場の底堅さを示唆した一方、非農業部門に限れば7月季節調整前の数字は前月から減少しており民間部門の頭打ち感を想起させる結果でした。コロナ禍で実施された特別加算分の失業給付はほぼ半数の州が早期打ち切りを決めているため、この部分の雇用者数増加は期待出来ますが、足もとの雇用を支えた教員採用はそろそろ一巡するとみられ労働市場への不安は払しょく出来ていません。新型コロナ変異株の拡大による影響が直撃しやすいとみられるサービス業の回復進展がなければ、復興や金利正常化期待に冷風が吹く可能性はあるでしょう。サービス業分野の雇用者数増減が最重要項目と考えています。

 

今回のNFPは、教職員採用分の15-20万人程度が減少するとして70-80万人が強弱判断の分かれ目となるのではないでしょうか。

 

1)80万人を上回れば、前倒しでのテーパリング開始観測からドル高

2)レンジのなかなら9月テーパリング開始宣言、11月開始予想で若干のドル高

3)70万人を下回れば、来年1-3月期のテーパリング開始観測台頭からドル高調整へ向かう

 

といったシナリオを想定しています。

★想定するシナリオ★

【シナリオ①】80万人以上

早期テーパリング観測からドル高

【シナリオ②】70-80万人

これまでの11月テーパリング開始で若干ドル高

【シナリオ③】70万人以下

年内テーパリング開始観測後退でドル安

 

もっとも、9月の為替相場のテーマが米テーパリングだけでとは限りません。7月末で、2019年に停止された連邦政府の債務上限が復活し、米デフォルト懸念がじわりと広がるなかで、バイデン政権が目指す3~4兆ドル規模の「アメリカ再建策」(インフラ投資、米国雇用計画、米国家族計画)の行方も警戒したいです。目下、視線はテーパリングを巡る動向ですが、これが一段落すれば次は予算問題へ目線が遷移すると思われ、9月前半と後半で投資家のポジション構築の動機が変化する可能性があり、値動きには注意が必要です。

 

 

 

図表4.雇用統計の実績と予想

 

  非農業雇用者数変化(万人) 失業率(%)
予想値 実績値 修正値 予想値 実績値 修正値
2021年  8月 75.0 23.5   5.2 5.2  
2021年  7月 87.0 94.3 105.3 5.7 5.4  
2021年  6月 70.0 85.0 93.8 5.7 5.9
2021年  5月 65.0 55.9 58.3 5.9 5.8
2021年  4月 97.8 26.6 27.8 5.8 6.1
2021年  3月 64.7 91.6 77.0 6.0 6.0

 

 

  平均時給 前月比(%) 労働参加率(%)
予想値 実績値 実績値
2021年  8月 0.3 0.6 61.7
2021年  7月 0.3 0.4 61.7
2021年  6月 0.4 0.3 61.6
2021年  5月 0.2 0.5 61.6
2021年  4月 0.0 0.7 61.7
2021年  3月 0.1 ▲0.1 61.5

 

 

◆関連の経済データ実績

 

  ADP雇用統計(万人)
予想値 実績値 修正値
2021年  8月 61.3 37.4  
2021年  7月 69.5 33.0 32.6
2021年  6月 60.0 69.2 68.0
2021年  5月 65.0 97.8 88.6
2021年  4月 80.0 74.2 65.4
2021年  3月 55.0 51.7 56.5
出所:Bloomberg、上田ハーローFX「経済指標カレンダー」

 

 

 

 

4.今回の戦略

 

【要点】レンジブレイクはまだ先か、目先は逆張りで

ドル円は、7月2日高値(111.649円)、8月4日安値(108.725円)を各々起点とする上下ラインが形成するトライアングルのなかで振幅しています。110.40-50円、109.40-50円を上下限とする抵抗帯・支持線をどちらに抜けるかが今日明日の強弱判断の分かれ目と言えそうです。しかしながら、5月以降続く110円を中心としたボックス圏(下限108.725円-上限111.649円)を放れる雰囲気はなく、上下限のラインから0.5-1%近く放れた地点(目安:下は109.00円レベル、上は111.00円レベル)は慎重に逆張りで攻めたいと考えます。

 

 

 図表5.ドル円日足チャート

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート」

 

 

 

 

執筆者紹介:小野直人(営業部)

商品取引会社、金融情報ベンダーで個人投資家向け市況情報の配信に従事後、2016年1月に上田ハーロー入社。FXのレポート執筆に加え、Bloombergなどの情報ベンダーからの取材やSNSでの情報配信を行う傍ら、投資家に相場の面白さを伝えるため、用語解説(用語辞典)にも力を入れている。レポート執筆歴は15年以上。分かり易い&シンプルを目指してウィークリーレポート『ハロンズ』では米ドル中心に執筆。

東北出身ながら寒さにはめっぽう弱い。

 

 

 

【今後のアメリカ雇用統計発表予定】
・10月08日(金)21時30分(夏)
・11月05日(金)21時30分(夏)
・12月03日(金)22時30分(標準)

※日時は日本時間です。

(標準)は米国東部時間での標準時間、(夏)は米国東部時間での夏時間を指します。

 

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