執筆日時:2021年3月31日00時31分
執筆者:上田ハーロー株式会社 小野 直人

 

 

 

 

※2021年4月2日(金)21時30分発表の結果はこちら

 

1.はじめに

2021年4月2日(金)、日本時間21時30分にアメリカで3月雇用統計が発表されます。米国が夏時間となり日本ではこれまでより1時間前倒しでの発表です。ワクチン配布により大きくリバウンドした前月統計の影響から、今回も好結果を期待する参加者は多いです。自然と目線は上向きとなりますが、その分、ネガティブな方向にかい離が広がれば梯子を外される投資家もいそうで、結果の強弱には注意が必要となります。

 

 

2.前回のおさらい

米2月雇用統計は、新型コロナウイルスの感染拡大ペース鈍化やワクチン接種によるマインド転換から、非農業部門雇用者数(NFP)は市場予想の18.2万人増を大幅に上回る37.9万人で着地。1月NFPも16.6万人へ上方修正されたほか、失業率も6.2%へ0.1ポイント改善するなど文句なしといった感じで、回復ペースが勢いを取り戻しつつある姿がうかがえました。

 

 図表1.分野別新規雇用者数(千人)

 

出所:米国労働省

 

結果公表直後のドル円相場は1.62%台まで上昇した米10年債利回りも手伝って、108.598円と昨年6月8日以来の水準まで小幅高に。もっとも、その後は長期金利の伸び悩みから、108.10円付近へ下げて越週。一方で、株価は金利上昇に押され一時マイナス圏まで押し戻されたものの、米経済の底堅さが見直され引けにかけ持ち直し、ダウ平均は572.16ドル高の31496.30ドルでその週を終えました。

 

 図表2.前回発表前後のドル円の動き

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート

 

 

 

 

3.今回の見どころ

コロナ感染拡大が収束しつつあるとの思いから、2月は宿泊・外食産業を中心に雇用の回復が確認できました。ワクチン接種の広がりによる感染リスク低下が見込まれることから、先行きもサービス業中心に雇用回復が期待できます。実際にワクチン接種を終えた高齢者が家族と会うため航空チケットを予約する事例が散見され、航空会社も業績回復に光が見え始めたと語っています。また、4月下旬からはテーマパークのディズニー・ワールド・リゾートも再開される予定です。当然、人の往来が激しくなれば感染再拡大のリスクは高まりますが、今の市場は経済活動進展への思いの方が勝っているようで、NFPは50-60万人程度と前月を上回る結果が期待されています。改善の進展が確認できれば、年末の利上げ観測を高め米国買いに弾みがつきそうで、ドル円は111.00円に迫ることになりそうです。

 

 

図表3.米国のコロナ感染者数とワクチン接種回数

 

米CDCデータを元に作成

 

もっとも、中長期で雇用回復が進展するか判断を下すには早計かもしれません。第一に回復の二極化が想定されること、第二にバイデン政権による増税・最低賃金引き上げ策が回復ペースを弱める可能性があるためです。第一の問題は労働者の属性ですが、有色人種や高卒労働者の低所得層の回復の遅れが見て取れることです。バイデン政権が1.9兆ドルの追加経済対策に失業給付の上乗せを盛り込んだのも、こうした層への支援が目的で質的な歪みは未解決といえます。

 

また、第二の問題も今後の雇用に影響を与えるかもしれません。民主党は最低賃金を2025年までに時給7.25ドルから約倍増の13-15ドル程度に引き上げようとしています。議会予算局(CBO)は連邦最低賃金を時給15ドルへ引き上げた場合、貧困者が90万人減る一方、140万人の雇用が失われるとの試算を示しています。加えて、増税策です。大統領は支援策の財源確保のため、法人税(21%→28%)と高所得者向け(37%→39.6%)の税率引き上げを目指しています。賃金引上げと増税のダブルパンチで、企業側は積極的な採用を見送るケースが増えても不思議はないでしょう。

 

 

図表4.構成要素別の失業率(%)

出所:米国労働省

 

歴史を振り返ると、日本の池田内閣が唱えた所得倍増計画は実現までに7年かかりました。しかも、当時の国民総生産(GNP)が平均6%増だったにもかかわらずです。日本と米国で事情が違うため単純な比較は難しいですが、米国版の所得倍増策は経済・財政への負担は相当大きなものになると思われ、予想外の方向へ市場を導くかもしれません。雇用への不安が直ちに表面化してくるとは考えませんが、半年程度で眺めた時には法案提出など政策実現への動きに市場が動揺する局面があっても不思議はないと考えます。


 

 

図表5.雇用統計の実績と予想

 

非農業雇用者数変化(万人) 失業率(%)
予想値 実績値 修正値 予想値 実績値 修正値
2021年  3月 64.7 91.6 6.0 6.0
2021年  2月 18.2 37.9 46.8 6.3 6.2
2021年  1月 5.0 4.9 16.6 6.7 6.3
2020年12月 7.1 ▲14.0 ▲22.7 6.8 6.7
2020年11月 46.9 24.5 33.6 6.8 6.7
2020年10月 60.0 63.8 61.0 7.7 6.9

 

 

平均時給 前月比(%) 労働参加率(%)
予想値 実績値 実績値
2021年  3月 0.1 ▲0.1 61.5
2021年  2月 0.2 0.2 61.4
2021年  1月 0.3 0.2 61.4
2020年12月 0.2 0.8 61.5
2020年11月 0.1 0.3 61.5
2020年10月 0.2 0.1 61.7

 

 

◆関連の経済データ実績

 

ADP雇用統計(万人)
予想値 実績値 修正値
2021年  3月 55.0 51.7
2021年  2月 17.7 11.7 17.6
2021年  1月 4.9 17.4 19.5
2020年12月 8.8 ▲12.3 ▲78.0
2020年11月 43.0 30.7 30.4
2020年10月 65.0 36.5 40.4
出所:Bloomberg、上田ハーローFX「経済指標カレンダー

 

 

 

 

4.今回の戦略

 

【要点】110.80-90円で戻り売り

3月のドル円はドル安が和らぎ110.40円付近へ騰勢を強めました。現状の水準を鑑みれば、111円突破から昨年高値112.21円が視界に入ってきそうな雰囲気ですが、足もとの上昇スピードが速かったほか、復興もまだら模様のなかでこのままのペースを維持でるかは不明です。

 

110.30-112.50に広がる月足一目均衡表・雲や2015年高値の125.842円からのフィボナッチファンの38.2%ライン(4月は110.80-111.00円)など目立つ抵抗帯が並ぶことから、110.80-90円付近まで戻したところは先ずは戻り売りで対応したいです。もっとも、米雇用への改善期待は強いようで、指標結果が悪くても109.20-30円付近では押し目買いも入りやすいでしょう。

 

 

 図表6.ドル円月足チャート

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート

 

 

かたや下方向は108.50円アラウンドで踏み止まれるかがポイントです。ここは109円台へ上値を伸ばす直前にもみ合った箇所であり、このボックス圏のレンジ下限付近で支えられるかどうかがポイントになるでしょう。ここを割り込んだ時は一度仕切り直しのイメージです。

 

 

 図表7.ドル円日足チャート

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート

 

 

また、クロス円もじり高か。住宅価格抑制策が導入され75円半ばまで低下したNZドル円でしたが、日足一目均衡表・雲の上限で切り返し、直近のレジスタンスとみられた77.00円を超えて底堅さがうかがえます。心理的節目の80.00円突破は時間がかかるかもしれませんが、緩やかに切り上がる一目雲に沿って上昇する期待はあります。ただし、MSCIエマージング・マーケット指数は高値から約10%近く下げ調整局面入りが意識されるなかで、ドル独歩高の流れが新興国からの資金流出を促すようなら、新興国通貨中心にクロス円を圧迫する危険もあるため、高値掴みには注意したいです。(了)

 

 

 図表8.NZドル円日足チャート

 

出所:上田ハーローFX「UHチャート

 

 

 

 

 

 

 

執筆者紹介:小野直人(外貨保証金事業部)

商品取引会社、金融情報ベンダー中心に個人投資家向け市況情報の配信を経験。分かり易い&シンプルを目指してWeeklyレポート『ハロンズ』でユーロ中心に執筆。東北出身ながら寒さにはめっぽう弱い。

 

 

 

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【今後のアメリカ雇用統計発表予定】
・05月07日(金)21時30分(夏)
・06月04日(金)21時30分(夏)
・07月02日(金)21時30分(夏)
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・09月03日(金)21時30分(夏)
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・11月05日(金)21時30分(夏)
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※日時は日本時間です。

(標準)は米国東部時間での標準時間、(夏)は米国東部時間での夏時間を指します。

 

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